「原発依存度低減」の文言削除で電気代は下がるのか
第7次エネルギー基本計画の原案で、「可能な限り原発依存度を低減する」との文言が削除されたことが報じられている。原子力発電を巡っては、2011年の東日本大震災を受けて、一度は全ての原子力発電所が停止し、その後稼働を再開する原子力発電所はあるものの、未だ多くの原子力発電所が稼働を停止した状態になっている。
原子力発電所の停止によって、経済面では主に二つの問題が生じている。一つは、慢性的な貿易赤字の定着である。電源構成における原子力発電の割合が大きく低下する中で、火力発電の割合が上昇した。その後、再生可能エネルギーが徐々にシェアを拡大する中で、火力発電の割合は一頃よりも低下したが、依然として高い比率となっている(図表1)。資源に乏しい日本においては、鉱物性燃料の多くを輸入に頼らざるを得ないため、鉱物性資源の価格高騰等も相俟って、貿易収支が赤字転化する要因の一つとなった(図表2)。貿易赤字は恒常的な円売りをもたらし、昨今の円安の一因にもなっている。
もう一つの問題として、鉱物性燃料価格上昇時における脆弱性が挙げられる。鉱物性燃料価格の影響を受けにくい原子力発電の電源構成に占めるウエイトが低下したことで、日本の電気代は鉱物性燃料が上昇した際に大きく上昇しやすい状況になっている。実際、ロシアがウクライナに侵攻し、エネルギー価格が上昇した2022年以降、電気代は大きく上昇した。この間、2021年に原子力発電所を再稼働させていた関西電力と九州電力の管轄である近畿地方と九州地方の電気代は価格が上昇する中でも全国と比較して抑制されていたが、多くの地域ではエネルギー価格上昇の影響を強く受け、高い電気代の負担に悩まされることとなっている(図表3)。
当然のことながら、原子力発電に関しては、安全性の確認や近隣住民の同意など、乗り越えるべきハードルは多く、経済合理性だけで議論を進めることはできない。ただ、再稼働による化石燃料の使用量削減が円安圧力の低減や電気代の低下に繋がるというメリットも広く認識されるべきである。メリット・デメリットの双方が広く認識された上で、原子力発電がどの程度用いられるべきなのか、建設的な議論が進展することが望まれる。