シティ・モビリティ

米中の自動運転ユニコーン、10月はIPOや資金調達が活況
ー米Waymoの圧倒的存在感、中国からはWeRideがナスダックでIPO、Pony.aiもIPO間近ー

上級研究員 新添 麻衣

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  (2024年8月1日発行)
  中国の自動運転ユニコーン、続々と世界攻勢へ -WeRideが米国でIPO間近、Pony.ai、Momentaも続くか-

10月は自動運転スタートアップの大口の資金調達やIPOのニュースが相次いだ。

==【中国WeRide、ナスダックにIPO / ルノー・日産・三菱が出資】==
 10月25日、中国の自動運転ユニコーン「WeRide(文遠知行)」が、Nasdaqに上場を果たした※1。米中対立を背景に、2021年夏以降、上場承認が得づらい状況にあった中国企業だったが、久々のIPOが実現した。1株あたり15.5ドルで取引を開始し、ADS(米国預託株式)で最高8,903,760株を発行する ※2。これにより約1億3,800万ドルを調達するほか、私募でも3億2,000万ドルを調達し、総調達額は4億5,800万ドル超(約700億円超)となる見込みである。

ルノー・日産・三菱等から出資を受けるWeRideは、レベル4ではロボットタクシーやロボバスのほか、配送用のバンや路面清掃車の開発を手掛け、シンガポールや中東、欧州にも進出している。また、自家用車向けのレベル2のソリューションも開発し、フルサービスの自動運転プレイヤーとなっている。

タクシー、バスから路面清掃車まで、フルサービスのWeRideの製品ラインナップ
<WeRideの製品ラインナップ/出典:WeRide> 

== 【Pony.aiもナスダック上場に向けた書類提出を完了、近日中IPOか?/トヨタ等が出資】 ==
 トヨタ等が出資する「Pony.ai(小馬智行)」も、10月17日にNasdaqへIPOに向けた書類一式を提出しており※3、近日中のIPOが見込まれる。Pony.aiは一線都市(北京、広州、上海、深圳)の全てでロボットタクシーを展開し、自動運転の大型トラックによる物流網の構築にも取り組んでいるほか、自家用車向けの自動運転システムの開発も行っている。

レベル4のタクシー・大型トラック、自家用車向けのレベル2ソリューションを展開するPony.ai
<Pony.aiの車両と物流網の構築完成予想図/出典:Pony.ai>

== 【配車大手DiDiの自動運転子会社/来年のロボットタクシーの量産実現に向け資金調達】 ==
 中国政府の態度を厳格化させる引き金となった配車アプリ大手のDIDI(滴滴、2021年に米国でIPO)だが、傘下の自動運転子会社「滴滴自動駕駛」もまた、10月にシリーズCで2億9,800万ドル(約450億円)を調達している※4。同社は、レベル4のロボットタクシーの量産化を目的に、広州汽車集団(GAC)傘下のAION(广汽埃安)と4月に合弁会社を立ち上げており、今般の資金調達もGACが主導した。合弁会社の「広州安迪科技有限公司」では、2025年の量産開始を目指している※5

==【米Waymo、桁違いの資金調達を実現/ロボットタクシー事業の運行エリア拡大とユーザビリティ向上へ】==
中国国勢のライバルとなる米国Waymoもまた、親会社Alphabetが主導する投資ラウンドで10月25日までに想定を上回る56億ドル(約8,570億円)を調達しており、その金額規模で他社の追随を許さない状況にある※6

既に、アリゾナ州フェニックス、カリフォルニア州サンフランシスコ、ロサンゼルスで周縁部に運行エリアを拡大しながらロボットタクシーサービス「Waymo One」を一般公開しており、次はテキサス州オースティン(現在は招待制にて運行中)、ジョージア州アトランタ(実験中)での一般公開を目指している。

今回の調達額は、Waymo Oneのさらなるサービス拡大のために使われるが、この「拡大」は運行都市の拡大のみを目指すのではなく、より多くのユースケースに対応するための以下のようなユーザビリティ向上の取組みも含まれる:
 ■配車アプリ大手Uberとの提携により、より多くの手配に対応(オースティン、アトランタ)
  ※現在、サンフランシスコ等ではユーザーはWaymoのアプリをインストールする必要がある。
 ■ユースケース拡大のために、高速道路での走行試験にも着手
  ※現在、フェニックス・スカイハーバー国際空港~フェニックス市街地を招待制で実証運行中※7
 ■タクシー車両の安定調達のため、提携済みのジャガー・ランドローバー、Zeekrに加え、新たに現代自動車とも提携
 ■ニューヨーク州のニューヨーク、バッファロー、特別区のワシントンD.C.での走行試験に着手予定

中国勢と異なり、「輸出」の話は聞こえてこないWaymoだが、過去には、自社開発のLiDARを外販しようとしたことがある※8。仮にWaymoが海外進出するとなった場合には、あらゆる自動運転プレイヤーにとって脅威となるだろう。 

とはいえ、目下のWaymoの事業展開を見ると、約3.5億人の人口を擁するクルマ社会の米国の大都市圏を対象に、まずは招待制とエリアを限定した運行を開始し、次いで過密なダウンタウンを含む市内全域に運行エリアを拡大して一般公開し、さらにその大都市の郊外や周縁部に運行エリアを拡大している。地域の中心都市から外周部に徐々に拡大する手法をとることで、都市圏ごとに安全性を検証しつつ、知名度や社会受容性を獲得し、マーケットを獲得していっている。既に週に10万回以上の配車に対応するようになっており※6、レベル4の移動サービスにおけるフロントランナーであることは間違いないだろう。

Waymoのロボットタクシーの画像とサンフランシスコの街並み
<Waymoの車両とサンフランシスコの街並み/出典:筆者撮影>
見通しの悪い坂道や路上駐車の車が多く、難易度の高い場面が散見されるが、
市内全域でWaymo Oneは利用可能となっている。

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※1 WeRide “The World’s First IPO of Universal Autonomous Driving Technology Company! WeRide Officially Listed on Nasdaq”, 25 Oct., 2024.
※2
WeRide “WeRide Inc. Announces Closing of Initial Public Offering”, 28 Oct., 2024.
 7,742,400株を発行して10月28日に取引を終え、以降、株主向けに最大1,161,360株の追加発行オプションがある。
※3 Pony AI Inc.によるNasdaqへのCompany Filingsより(提出日2024年10月17日)
※4 36kr「ネット配車「DiDi」の自動運転子会社、シリーズCで約450億円を調達 ロボタクシーの商用化を加速」、2024年10月27日
※5 滴滴自動駕駛「滴滴自动驾驶与广汽埃安合资公司获批,2025年推出首款商业化L4车型」、2024年4月7日
※6 Waymo “Investing to bring the Waymo Driver to more riders”, 25 Oct., 2024.
※7 フェニックス・スカイハーバー国際空港プレスリリース “Phoenix Sky Harbor is on track to be the first airport in the world to offer Waymo rider-only autonomous vehicle service”
※8 Waymo “Bringing 3D perimeter lidar to partners”, 6 March, 2019

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