シティ・モビリティ

羽田空港アクセス線「臨海部ルート」2031年度開業にむけ調整
~交通結節点として開発が進む新木場などの臨海部エリアの開発に注目が集まる~

上級研究員 福嶋 一太

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JR東日本は2024年7月24日、羽田空港と東京都心を結ぶ新たな3つのルート「羽田空港アクセス線(仮称)」のうち、羽田空港と新木場駅(東京都江東区)を結ぶ「臨海部ルート」を、2031年度に開業予定であることを発表した。
 羽田空港アクセス線は、国交省交通政策審議会で羽田空港のアクセス向上について検討され、2016年4月に答申された「東京圏における今後の都市鉄道の在り方について」に織り込まれた。この答申以降、増大するインバウンド需要への対応から開業にむけた準備が進められてきた経緯がある。


また、羽田空港アクセス線では、羽田空港P3駐車場の地下に設立予定である羽田空港新駅から東京貨物ターミナルまでが「アクセス新線区間」として新たに整備され、東京貨物ターミナルから先を3ルートに分岐する計画となっている。この3ルートの1つが、今回開業が発表された臨海部ルートである。臨海部ルートでは、アクセス新線区間を経て、東京貨物ターミナルからりんかい線(東京臨海高速鉄道が運営)に入り、新木場駅に到着する。所要時間は約20分となる見込みで、モノレールを利用する現在の所要時間と比較しておおよそ半減される。
 なお、これ以外のルートは、新宿方面を結ぶ「西山手ルート」と新橋・東京方面を結ぶ「東山手ルート」である。このうち東山手ルートは、2031年度の開業予定であることが2023年4月に発表されている。「東山手ルート」に常磐線、宇都宮線、高崎線が乗り入れることで、茨城、栃木、群馬方面からの空港へのアクセス向上が期待されている。京急電鉄や東京モノレールを利用すると30分程度かかる東京駅へのアクセスが約18分に短縮される。
 また、運行本数は8本/時、144本/日という高頻度での運行が予定されており、羽田空港の更なる利便性向上につながる見通しだ。(西山手ルートは現時点で開業時期未定。)

今回発表があった臨海部ルートは、羽田空港へのアクセスが不便だった新木場方面の利用者の取り込みだけを狙ったものではない。羽田空港を利用する訪日外国人旅行客は、都心を経由せず、お台場などの臨海部エリアや、新木場駅から京葉線を経由して幕張などの千葉方面へのアクセスが容易になる。特に、羽田空港から東京ディズニーリゾートへのアクセス改善が期待される。このように、臨海部ルートは訪日外国人旅行客の新たな観光導線が生まれる可能性も見据えた新線といえるだろう。

一方でインバウンド需要の獲得にはMICE1という目線が欠かせない。MICEは、宿泊、飲食、観光といった消費活動に加え、滞在期間が比較的長いことから、観光以上の経済効果を生み出すことが期待されている。特に国際会議は国内会議と比較しても大きな経済波及効果をもたらす2
 今回の羽田空港アクセス線の開通により、国際展示場(りんかい線経由)や幕張メッセ(京葉線経由)といった大型コンベンションホールへの羽田空港からのアクセスも容易になったことで、MICEを通じた臨海部エリアへの経済効果も期待できるだろう。また、MICEの増加は、東京オリンピック・パラリンピックで整備した臨海部の様々な施設を、イベント会場として利用することで稼働率向上につながる可能性もある。
 羽田空港アクセス線の導入効果を最大限発揮するには、海外からのMICE参加者にビジネスと観光をセットで楽しんでもらうという視点が求められる。そのためには臨海部には単なる交通結節点としての機能だけではなく、ビジネス街として、また職住遊近接型の街としての発展に期待がかかる。

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