シティ・モビリティ

再配達率削減ポイント10月開始へ
~消費者行動変容への取組み~

主任研究員 水上 義宣

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2024年5月31日、国土交通省は「再配達率削減緊急対策事業」(補助事業)の募集を開始1した。

EC(電子商取引による通信販売)の伸びにより宅配便の取扱個数が年間50億個を超える2中、宅配便の再配達率は約12%3と高止まりしており、物流事業者の負担や環境負荷等の問題を引き起こしている。

補助事業は、消費者が荷物の受取方法や日時等を確認・選択できる仕組みを整備し、ポイントを付与することで消費者の行動変容を促すことを目指している。2024年6月28日に応募が締め切られ、2024年7月中旬頃に補助対象事業者が認定される。

同事業の公募要領によると、2024年10月以降最大2か月間、配送が一回で完了するか、ゆとりある配送日程等を選択するか等をした消費者に対し、EC事業者等がポイントを付与する原資の1/2を1配送あたり5円を上限に国が補助する。

宅配便が再配達になる理由は、国土交通省が行った調査4によると、《図表1》のとおり「配達日時が指定できない商品だった」が36.4%で最も多く、続いて「配達に来ることを知らなかった」が26.1%となっている。消費者が配達日時を選べなかったり、知らなかったりすることが再配達の主な原因と考えられる。

≪図表1≫宅配便が再配達になる理由

そこで、今回の事業では、配達手段や日時の選択肢の追加や、消費者・EC事業者・物流事業者間でのデータのやり取り、コミュニケーションのためのシステム改修を行う、①再配達率削減システム改修を補助することとした。また、①のシステム改修を行ったEC事業者を対象に、②再配達率削減ポイント付与原資を補助する。さらに、配送ルート支援アプリや受け取る消費者と運転手のコミュニケーションアプリ等を導入する③物流負荷軽減アプリ実証も補助する。ただし、③については既成アプリの利用を前提とし、システムの開発や改修は補助対象とならない。

≪図表2≫再配達削減緊急対策事業の概要

一方で、アマゾン等の大手EC事業者では、置き配や配達日時の指定、コンビニ受取り等の選択肢は既に用意されていることが多く、再配達率削減システム改修によってどのような機能が追加されるか、消費者により強く働きかけられるかが再配達率削減の鍵になると考えられる。また、今回の事業では置き配バッグの購入補助や宅配ボックスの設置補助等はないため、消費者の行動変容には、受け取れるコンビニ等の拡大といった方法も必要となるだろう5

②再配達率削減ポイント付与は2024年10月1日か①再配達率削減システム改修が完了した日のどちらか遅い方を開始日とし、開始日から2か月後か2025年1月14日のいずれか早い方までに発生する費用を補助する《図表3》。従って、2024年10月1日に開始すると対象は10月、11月に受取り等によりポイント付与が確定した荷物になる。この時期には11月29日にブラックフライデー、12月にクリスマス・年末商戦があり、11月までの配達を対象とするとかえって11月末に配達が集中する恐れもある。EC事業者にはシステム改修完了日を11月にずらし、11月、12月をポイント付与対象にしたり、補助事業とは別に独自にポイント付与を継続したりする等、再配達率削減、物流事業者の負荷軽減にとって効果的な実施、実証が期待されるだろう。

なお、フリマアプリ等の個人間取引やポスト配送型商品はポイント付与の対象外となる。経済産業省「令和4年度電子商取引に関する市場調査報告書」によると2022年個人間ECは前年比6.8%増の2.4兆円となっており、個人間取引における行動変容は今後の課題といえる。

≪図表3≫再配達率削減ポイント付与に対する補助期間のイメージ

以上の消費者の選択肢の拡大とポイント付与により、物流負荷の低い選択を消費者に定着させられるかも課題となる。補助対象事業者に対しては、事業終了後も取組みを継続することを求めているが、ポイント付与については費用もかかることであり限界もあるだろう。2か月の実証実験によるポイント付与終了後も、追加された機能が消費者に選択されるものであるかが焦点となる。

また、従来の国土交通省による再配達率のサンプル調査はヤマト運輸、佐川急便及び日本郵便のサンプルに基づいているが、アマゾン等ではこれら大手3社に依らない配送も増えている。今回の補助事業ではポイント付与に補助金を交付することから、補助対象事業者に配達実績等のデータ提出を求めている。政府や事業者がこうして集まったデータをもとに再配達の実態や消費者の行動をより詳しく分析し、さらなる取組みにつなげていくことが期待される。

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