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【Vol.79】1.「報道の危機」に見るディスラプション

フェロー 隅山 正敏

Ⅰ.はじめに

報道機関は、SNSの普及を機に、主要な事業領域の全てにおいて業務・収益の両面でビジネスモデルの破壊(ディスラプション)に直面している。

Ⅱ.報道機関を襲うディスラプション

報道機関はニュース発信市場と広告市場とを組み合わせて収益を得る「両面市場」モデルをとる。前者では競争の激化(ネット事業者の参入)と事業環境の変化(ニュースの作成と流通の分離、発信者優位から受け手優位へ)が報道機関に業務モデル・収益モデルの立て直しを迫っている。ニュース発信での不振(読者・視聴者の減少)は当該メディアの広告価値を引き下げ、広告主のネット広告シフトと相俟って報道機関の広告収入を直撃している。

Ⅲ.報道機関の反撃

各国の報道機関は広告収入を取り戻す相手にグーグル(ニュース集約サイト)とフェイスブックを選び、司法(法廷闘争)、行政(競争当局への申立て)、立法(ロビー活動)の三権の全てを利用してニュース利用の対価を両社に請求している。各国政府の後押しもあり、両社からの譲歩を勝ち取ったものの、その受取金額は報道機関の経営を持続的に支える規模ではない。

Ⅳ.政府支援の背景

各国政府は「報道機関の反撃」を「無理を承知した上で」支援している。その背景には政治的意図を持った「フェイクニュースの拡散」がある。ウクライナ紛争(2014年)、欧州連合離脱をめぐるイギリス国民投票(2016年)、アメリカ大統領選挙(同)などで民主政治を揺るがすリスクとして顕在化し、各国は各種措置を講じた。その一環で「正しい情報を発信する」報道機関を後押しすることを決めた。

Ⅴ.残された課題

ニュース発信事業ではディスラプションに加えて読者・視聴者の離反が生じている。報道各社はマーケット戦略の採用、収益源の多様化、報道の質の向上などに取り組んでいる。

Ⅵ.おわりに

ディスラプションに直面した報道機関は、広告事業(第3章)とニュース発信事業(第5章)の立て直しに取り組んでいるが、収入減少傾向に歯止めがかかってない。その苦闘は、ディスラプションに対して「前倒し」で対処する必要性を教えてくれる。

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