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【Vol.78】3.代替タンパク質の拡大と代替タンパク質をめぐる議論

主任研究員  内田 真穂

I.はじめに

持続可能な食料生産システムに対する関心が世界的に高まる中、「代替タンパク質」と呼ばれる分野が注目を浴びている。植物性代替肉や培養肉など、新たなタンパク質製品の開発を目指すスタートアップ企業が続々と誕生し、大手企業の参入も相次いでいる。

II.代替タンパク質が注目を浴びる背景

代替タンパク質が注目を浴びる背景には、人口増や中間層の拡大に伴う食肉需要の増加による将来のタンパク質不足への懸念と、現行の畜産業が地球環境に与える負荷が高く持続可能性が低いことがある。消費者の健康志向、環境問題や動物の福祉に対する関心の高まりも市場の活況を後押ししている。

III.代替タンパク質のイノベーション

代替タンパク質の中でも有力なのが、植物性代替肉、培養肉、微生物・発酵技術による乳卵、昆虫食である。本章では、市場をリードし、注目される代替タンパク製品やその特長等を紹介する。

IV.代替タンパク質をめぐる議論

代替タンパク質が本当に健康的で環境に優しいのかには諸説ある。植物由来、昆虫由来の製品の中には塩分が多く必ずしもヘルシーとは言えないものもある。培養製品は畜産による環境負荷はなくとも培養施設におけるエネルギー効率やCO2の排出など畜産とは違った側面で環境への配慮が求められる。遺伝子組み換え技術を使用している製品に対しては、遺伝子組み換え作物反対論者からの反発もある。

V.代替タンパク質は消費者に受け入れられるのか

人工的に製造される培養肉に対する消費者の受容度には、国により差異があるものの、抵抗感を持つ者は多い。環境面のメリットや倫理を訴えるだけでは特定の層向けの商品に留まる可能性がある。量産化やコストの問題をクリアし、安全性に対する不安を払拭するよう消費者の理解を深めていくことが必要である。植物性代替肉についてはヘルシーさや肉らしさをアピールするだけでなく、積極的に選択されるような商品コンセプトや料理の提案などのマーケティングが普及を促すと考えらえる。

VI.おわりに

新たなタンパク質の開発は持続可能な食糧生産システムの構築のために不可欠である。課題は多いが、食生活を変えるポテンシャルは十分にあるのではないか。

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