その他

【Vol.77】6.なぜ日本では認知症有病率・発症率が増加しているのか?

主任研究員 高杉 友

I.はじめに

最近の先進国による認知症有病率・発症率の傾向を概観し、認知症発症に影響を与える生物学的・社会・環境要因を整理し、日本の認知症発症率増加の背景・要因について記す。

II.世界の高齢化に関する統計データ

日本だけではなく、世界で人口の高齢化が加速している。それに伴い、認知症高齢者の急増が社会的な課題となっている。

III.先進国の認知症有病率・発症率の傾向

欧米諸国では過去数十年間で認知症の有病率が2割~6割、発症率が2割~4割低下したという報告が続いている。一方、日本では認知症の有病率・発症率が増加している。

IV.認知症発症に影響を与える要因

欧米諸国の認知症の有病率・発症率低下の要因として、疾病管理の改善、健康行動の推進のような生物学的な要因が挙げられた。このほか、社会経済的な要因、知的活動、環境要因と認知症リスクとの関連も確認された。一方、日本では、糖尿病の増加、西洋風の食事形式の拡大、運動習慣の欠如といった生物学的な要因が大きいことが示された。このほか、急速な高齢化・長寿の影響、第二次世界大戦後の社会経済的な状況の急激な変化のような人口動態及び時代・歴史的背景の観点から認知症リスクの要因を確認した。最後に、認知症リスクが高まっている社会的孤立に陥っている人が日本に多いことを示し、その対策として地域の社会参加が認知症リスクを下げることを示唆した研究を紹介した。

V.おわりに

日本でも疾病管理及び健康行動の改善を図る公衆衛生政策を推進する必要がある。年齢が若い高齢者ほど、学歴などの社会経済的状況が向上していること、就労など高齢者の社会参加が増えていくことなど、社会要因の向上が考えられ、今後、日本でも認知症の発症率が下がる可能性はある。社会的孤立を抑制するために地域の社会参加を増やす取組みは、国・地域レベルの社会政策として捉えることが重要である。

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