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【Vol.77】2.コロナ時代のESG投資がD&Iの進展を加速する~D&I の課題と ESG 投資の潮流~

主任研究員 大島 由佳、主任研究員 大沢 泰男

I.はじめに

新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、ESG投資の3要素の中で、Social(S=社会)への関心が高まっている。中でも、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に注目し、D&Iと企業価値やリスクとの関係に関する研究も進んでいる。他方、様々な角度から重要性が指摘されてきたD&Iはいまだ発展途上の課題である。本稿では、D&Iの現状を紐解いたうえで、コロナ時代のESG投資がD&Iの進展を加速することへの期待と、そのための課題を示したい。

II.日本企業にD&Iが求められる理由・背景

D&Iは、政府、企業、働く人々それぞれの立場からその重要性が指摘されている。その背景には、労働力の確保、イノベーション創出、社会的要請の3つの側面がある。

III.D&Iの歴史的経緯と昨今の状況

海外のD&Iへの取り組みに係る経緯や現状を整理すると、日本のD&Iが進まない背景に日本独自の雇用慣行や働き方の存在があり、これらが日本企業のD&Iに対する戦略課題への意識を削いでいると考えられる。そこで、社会的要請や企業経営への在り方を企業に伝える立場にいる投資家に着目する。

IV.ESGにおけるS及びD&I

財務指標からは見えにくい企業価値への貢献やリスク軽減につながるとの発想に基づき、D&Iを含めた幅広い要素から企業価値を測るESG投資は年々拡大し、企業経営に大きな影響を与え始めている。新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、投資家はD&Iの要素を含むSにも着目し始めており、SやD&Iが企業価値などに与える影響がますます重要視されていく環境になっている。

V.ESGにおけるD&Iの課題

ESG投資とD&Iとの結びつきをさらに強めるために、今後は情報開示の充実とともに、企業と投資家との対話が重要になる。企業価値の向上を通じて、企業・投資家の双方は利益を享受しうる。

VI.おわりに

不確実性が高い時代においては、事業環境の変化に柔軟に対応できる企業が様々なリスクを低減し、企業価値の向上を実現していく。ESG投資家には、これまで重要性が指摘されつつも動かなかった企業におけるD&Iの進展を加速させる役割が期待される。D&Iへの取り組みが遅れていた企業も、D&Iの持つメリットを理解し、推進していくことが改めて求められている。

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