その他

【Vol.77】1.新型コロナウィルスによるパンデミック発生と事業継続リスク~ソリューションを求めて~

上席研究員 海老﨑 美由紀

I.はじめに

新型コロナウィルスにより、中小企業を中心に莫大な経済的損失が生じ、パンデミックによる事業継続リスクの認識が変わった。欧米において損害保険による補償ニーズが高まるが、実際に損害保険によって都市封鎖による事業損失に対し補償がなされた例はそれほど多くなく、補償ギャップが明らかになった。そこで、損害保険でパンデミックリスクを取り扱うときに何が課題となり、現在どのように対処することが考えられているのかについて2020年8月までの公開情報を基にまとめた。

II.新型コロナウィルスで明らかになった事業継続リスクの補償ギャップ

新型コロナウィルスの感染拡大防止のため世界各国で都市封鎖が行われ、特に中小企業は大きな経済的損失を被った。欧米では事業継続保険で補償されることを契約者は期待したが、多くの事業継続保険契約で担保範囲外とされ、補償ギャップが明らかになった。

III.パンデミックによる事業継続リスクに民間の損害保険で対処できるか

これまでパンデミックリスクを担保する保険に対する需要は低く、保険会社もパンデミックリスクの引受けには慎重であった。パンデミックリスクの認識が高まり、事業収益の減少を補償する保険が求められている。しかしその損害は巨大になると予想され、支払能力の観点から民間保険単独では難しい。

IV.ソリューションを求めて

パンデミックを担保する事業継続保険にはさまざまな課題があり、各国ではこれらを乗り越えて将来のパンデミックに備えるよう、官民が連携し検討が進められている。また、パンデミックを対象とするパラメトリック保険も開発されている。

V.おわりに

新たな保険のしくみを構築するには課題も多いが、官民が協力し、長期的な視点でより望ましいしくみを検討していくことが必要ではないか。新型コロナウィルスは世界経済にとって危機であるが、新たなリスクシェアリングのしくみを作るきっかけとなるのではないか。

PDF書類をご覧いただくには、Adobe Readerが必要です。
右のアイコンをクリックしAcrobet(R) Readerをダウンロードしてください。

TOPへ戻る