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【Vol.75】3.中所得国の医療保障改革、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの道のり~増大する医療費と格差の是正、中国・インドを中心に~

上席研究員 海老﨑 美由紀

I.はじめに

世界的に医療費が増加しており対処が求められている。医療費の増加は家計の負担を大きくする。特に経済成長が目覚ましい中所得国では、後回しになってしまった医療保障を拡充し、医療費の自己負担を減らし、家計破綻に至るリスクを軽減することが求められる。事前にファンドを蓄積し、医療保障を通じ医療費支出に対するリスクプールを形成し、経済的なリスクからの保護を拡大していく必要がある。中所得国の中でも2大新興国である中国とインドを取り上げ、医療保障改革の取組みを追いながら、医療保障のカバー範囲を拡大しユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて進む道のりをたどる。

II.増大する医療費と財源、リスクプール、そしてユニバーサル・ヘルス・カバレッジ

世界的に医療費が増加しており、なかでも中所得国の増加率は高い。中所得国では急速な経済成長や中間層の拡大により医療費の増加は必至である。医療費の財源の中心は公的医療支出であり、WHOは、政策における公的医療支出の優先順位を上げて医療費増加に備えるリスクプールを形成し、また医療保障のカバー範囲を拡大してユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するよう呼びかけている。

III.中国およびインドの医療保障

中所得国の中核を成す中国、インドが医療保障の改革を進め、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けて進む道のりを追う。中国は改革開放後に医療保障のしくみが崩壊したものの2012年には人口の95%以上をカバーした。インドは医療費の自己負担割合が6割を超えているが、貧困層向けの医療保障の大幅なカバー拡大を行っている。それぞれがリスクプールの形成とカバー範囲の拡大に取り組んでいる。

IV.公的医療保障の拡充と民間医療保険の役割

ユニバーサル・ヘルス・カバレッジの達成に向けWHOを中心に議論されている医療保障の論点のいくつかを取り上げる。経済成長はユニバーサル・ヘルス・カバレッジの推進に寄与するが、政府主導で医療保障改革を進め、公的財源を確保し、格差の是正とリスクプールの統合を図っていくことが求められる。民間医療保険は公的医療保障制度で不足する部分を補う役割を担うが、適切な規制が必要となる。

V.まとめ

急速な経済発展を遂げる中所得国では、家計における医療支出による経済的リスクからの保護の拡大が重要な課題となっている。ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを達成するために医療保障の改革が進められており、将来に向けてさらなる拡充が必要となる。

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